経営コンサルタント会社で働く女性がいました
彼女は、プロジェクトリーダーとして、第一線で活躍する優れたコンサルタントでした
仕事は、深夜に及ぶこともしばしばでしたが、仕事にやりがいを感じていた彼女にとっては、大きな問題ではありませんでした
その後、彼女は結婚し、子宝にも恵まれました
しかし、家庭を持ち、子育てもしなければならない彼女にとって、それまでのように時間に関係なく、仕事をこなすことはできなくなりました
そして、仕方なく内勤のしごとに変えてもらうことになりました
それまで一緒に、大手企業の改革などに関わってきた仲間のコンサルタントは言いました
「その仕事、面白くないでしょ。よくできるわね」
「最近、見ないなと思っていたら、そんな仕事をしているんだ・・・・がんばってね」
みんな真剣にこちらの気持ちを考えて言っているというよりも、まるで脱落者に対するような言葉を投げかけてきました
苦しみました・・・・
会社を辞めることも考えました
自分が輝いて取り組んでいた仕事が目の前にあっても、今はもう、自分の仕事ではありません
そんな時、私の主催するセミナーに彼女は参加してきました
半年に及ぶ研修が終了した最後の打ち上げの飲み会の時、彼女は私に次のような話をしてくれました
「仕事とは自分らしく取り組むもの、というお話を伺いました。はじめは、そうは言っても、と思いましたが、どうせ、今の仕事をやるしかないんだから、できることから自分らしく取り組んで楽しんでみようと思いました。どんなささいな仕事も、自分が楽しいと思って取り組むように努力しました。私の場合、コンサルタントをしていましたから、自分が楽しいと感じるのは、他人の役に立っている時です。だから、今の仕事でも、もっと他のスタッフの役に立てるように、自分ならどうするかをいつも考えながら仕事に取り組みました。それを続けていたとこら、みんなから感謝されるようになったんです。そうしたら、この仕事がますます面白くなってきて、徹底的にこの仕事を極めていこうと思いました。そして今は、総務、人事の責任者として、予算の管理までできるようになったんです。今は、この仕事がとっても楽しくて仕方ありません。今までは職種にこだわっていましたが、それよりも自分らしくやれば、良かったんですね。」
私は彼女が本当に目を輝かせて話をしている姿を見て、ただ嬉しくて仕方ありませんでした
どんな仕事も自分らしくやることで、楽しいものに変えることができるようになります
とはいえ、自分らしくやるとはいっても、どうしたら自分らしく仕事をすることができるのでしょうか?
それは、誰にでもできることなのでしょうか?
彼女は特別な存在なのでしょうか?
たとえば、百人の起業家が、同時にラーメン屋さんをはじめることになったとします
もし、ここでラーメン屋さんとして成功する方法が一つしかないとすれば、みんなが同じ味、同じお店になってしまって、同じ価値を競い合うことになり、最後まで残って成功する起業家は一人だけになってしまうでしょう
百人すべて同じ味のラーメン屋さんを目指したとすれば、全員が成功することはできなくなります
そうではなく、百人すべての起業家が成功するためには、どうすればいいのでしょうか?
その答えは、百人それぞれが本当においしいと思う味を、本当にお客様に喜んでいただくことができるお店を、とことん追求していけばいいのです
そうすれば、いつか全員が繁盛するラーメン屋さんをつくることができるようになります
そして、それぞれが繁盛して話題のお店になった時に、それぞれの味や値段、材料、調味料、器、接客、お店のデザインなどを比べてみると、同じお店は一つもないことに気がつくはずです
汁だけでも、豚骨、塩、醤油などに分かれていたり、麺も細かったり太かったり、硬かったり、やわらかめだったり、具もいっぱいのものがあったり、シンプルなものであったり、本当にさまざまなラーメン屋さんがそれぞれの特徴を持って、成功していることでしょう
つまり、ラーメン屋さんの成功方法は百人いれば、百通りあるのです
それぞれがみな、他にはない自分らしいラーメン屋さんとして成功することができるのです
こうして、いろいろなラーメンをさまざまな雰囲気のお店で味わうことができれば、それは、一つの味しかないラーメン業界よりも、お客様にとっても楽しいはずです
自分らしさとは、すべての人に可能性をもたらすだけでなく、社会をバラエティに富んだ、より楽しいものに変えていくことにもなるのです
自分が今置かれている環境を、自分の舞台と思って真剣にとことん取り組めば、それはすでに、自分らしく取り組んでいることになります
何でも本気で取り組めば、否応なく自分らしくなってしまうからです
ちょっとでも、自分が気になることを改善し続けたり、自分がこだわりを持っていることを追究し続けたりすることで、どんどん自分らしいものになっていきます
自分らしさとは、そもそも自分自身がもっている感性に基づいた「こだわり」なのです
本気になるほど「こだわり」が発揮されるようになります
反対に、楽にやろうと思うほど、「こだわり」がなくなり、自分らしさも失ってしまうことになります
お客様からの電話相談を仕事にしている女性とお話したことがあります
その女性は、自分の仕事である電話応対に、大変にこだわっているというお話をしてくださいました
「電話応対だけで、会社の売上を二倍にすることができると思うんです。私のひと言で。お客様との関係が変わるからです。私がどのように応対するかで、会社の未来を変え、自分の未来を変えているんです」
「具体的には、電話応対の中で、一番こだわっているのはどこですか?」
「電話の応対の時、人生最高の笑顔を出すことにしています」
この「こだわり」は無限です
どこまでこだわっても、さらにこだわることは可能であり、こだわりきることはできないものなのです
一流の芸術家が、どんなに優れた作品ができたとしても、完璧ではないと、命ある限り創作活動に没頭し続けることができるのは、「こだわり」が無限だからなのです
「こだわり」は、そのものが個性です
その人にしかない、他人がまねできないものです
誰でも生まれながらにして持っているものであり、他人がそれを奪うことはできません
学んで習得するものでも、後から身につけるものでもなく、自分の中からどんどん湧き出してくるものです
どのような仕事であっても、「こだわる」ことで、私たちは自分らしい価値を社会に提供することができるようになるのです
最高の能力とは、自分の「こだわり」を発揮して、社会に貢献することだと思います
自分を信じて、自分らしくやることで、どのような仕事も自分の活躍の舞台となり、楽しいものに変えることができるのです
どんな仕事も楽しくなる3つの物語
福島正伸 株式会社KADOKAWA 2014
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