薬剤師をしていて思っていることがあります
「物から人へ」
「薬」という「物」に対する業務を中心に
時間を割いてきた薬剤師でしたが
これからはもっと
「人」つまり「患者さん」を対象とした業務に
重点を置いて取り組むことが求められる時代です
「薬」「病気」だけをみるのではなく
患者さんという「人」について
その「生活」や「人生」までも広い視野で捉え
それぞれが望む「健康な生活」を送るためサポートをする
そのために
薬剤師にはもっと「ほめる力」が必要なのではないか?
と思うのです
今までたくさんの薬剤師さんとご一緒してきました
薬剤師に限ったことではなく
日本人全体に見られる傾向なのかもしれませんが
「ほめる」より「足りないところを指摘」することの方が
圧倒的に多いように感じるのです
薬を飲み忘れる患者さんに
「これは大事なお薬なので忘れず服用してください」
そう指導する薬剤師はたくさんいます
でも
患者さんはそれが「大事な薬」であって
「忘れず飲む必要がある」ことがわかっていても
それでも飲み忘れて困ってしまっているのかもしれませんよね?
別の視点から考えてみれば
「大事な薬」を「忘れず飲む必要がある」ことを理解していて
「飲み忘れる」ことは「望ましくないこと」であることも
わかった上で
それでも定期的に受診をし
怒られることを覚悟の上で正直に「飲み忘れている」事実を伝えてくれた
嘘をつかずに正直に申告してくれた
と考えたら・・・どうでしょう?
その正直な気持ちを
ほめずにはいられない気持ちになりませんか?
何とかその患者さんの困りごとを
一緒に解決できるよう
寄り添って支えていきたいと感じませんか?
自分にも他人にも厳しい従来の生き方が
「定刻発車」的な日本人の正確さを育んできたとも考えられるので
ほめない文化すべてが悪いとも言えないと思いますが
そのことが「自己否定感」につながっていったところに
今の日本の「幸福度の低さ」を生んでしまったのではないかと
思うのです
あなたはほめられて嫌な気持ちになりますか?
ほめられて嫌な気持ちになる人はほとんどいないはずです
ほめられると悪い気がするどころか
いい気分になり
自信が湧いてきませんか?
ほめてくれた相手に好印象すら抱くのではないでしょうか?
お世辞ではなく 一言ほめる
それだけで場をなごませ
相手に好意を抱かせ対話がスムーズになるとしたら
なぜそれをやらないのか?
日本人はほめられることが少ないので
ほめられるとどれだけ嬉しいことなのか?
実感として理解できていないのかもしれません
ですが
「ほめる力」にはすごいパワーがあります
コミュニケーションにおいてこの力を利用しないのは
本当にもったいない
「ほめコメント」は
ただ「すごいね」と言っているだけでは相手に届かない
大切なのは相手に届いて相手が変わること
だから受け取った相手が大事にしたくなる言葉で
ほめることが大切
お世辞を言ったり
社交辞令をいう必要はない
それは「ほめる力」の本質ではない
「ほめコメント」をきちんとした言葉で
具体的に語れるようになるのが
薬剤師に必要なこれからの方向性
さらに「ほめる力」が高まることは
その人自身が「楽しく生きる」ことにも
つながっていくのです
ほめる力 ~「楽しく生きる人」はここがちがう~
齋藤孝 筑摩書房 2013
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