ふだんの服装がカジュアルな人VIPとの面会に同行させてもらえない。
私がいた「クリエイティブ」という部署は、会社の中でもスーツを着なくていい部署でした。
ビーサンの人もいれば、Tシャツの人もいれば、ジーパンの人もいました。
モノをつくる現場なので、それが許されたのです。
ただ、得意先の社長に会う時は、その格好では連れて行ってもらえません。
サラリーマン時代、私は毎日、ネクタイにスーツで会社に行っていました。
上司には「偉い人に会えるネクタイとスーツを常にロッカーに入れておけ」と言われました。
ただし、上司に今すぐ偉い人に会いに行くと言われた時に、そこからロッカーで着がえていると時間がかかります。
「じゃ、今度にするわ」と言われて、同行するチャンスを失います。
応接室にいる得意先の社長を上司に紹介してもらう時も、「いいや、また今度紹介するわ」ということになるのです。
VIPと面会するチャンスは、いつ与えられるかわかりません。
だから私は、常にネクタイ・スーツを着用していたのです。
人事部が映画に詳しい社員を検索したところ、選ばれたのは、社内で映画評論家をしている人、映画会社から転職してきた元プロデューサー、そして私の3人でした。
入社する時に、私の専攻は映画で、映画に詳しいというデータが人事部に上がっていたのです。
選ばれた3人が会長室に呼ばれました。
文化庁推薦映画の審査委員長をしていた会長に、どの映画がいいかを決める相談相手になるためです。
会長室に入る時は、当然、ネクタイ・スーツ着用です。
私はこの時、「ネクタイ・スーツを着ていてよかったな」と思いました。
ネクタイ・スーツを着ていなかったら、その役からはずされていました。
服装で選ばれるチャンスを得られるかどうかが決まるのです。
私の大学時代の友達は、卒業後、野球の世界に入りました。
その友達によると、新人のプロ野球選手をスカウトする時の基準は、たった1つだそうです。
それは、ユニフォームを着こなせるかどうかです。
ユニフォームを着こなせる選手は伸びます。
ユニフォームが何かぎこちない人は落ちます。
実際、就活で内定をとるのは、スーツを着こなせている学生です。
内定がとれない学生は、スーツ姿がぎこちないのです。
スーツが着こなせるかどうかの差は、着ている回数によります。
スーツを着ている回数が多いということは、毎日毎日、暑い中、いろんな会社をまわって就活を頑張っていたのです。
そういう学生が通ります。
スーツを着たのが3回目で、背中にしつけ糸がついたまま面接に行く学生は、行動力がないと判断されて落とされるのです。
選ばれる人、選ばれない人。1ミリの差が決定的な差を生む
中谷彰宏 ぱる出版 2016
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