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世界の「頭のいい人」はどんな人か?⑤

断られたくたいであきらめない。-情熱をとにかく、どんどんぶつけていくー

タランティーノ監督がオファーを断れれた

前項の「主張がはっきりしている」にも通じることですが、「主張」という点で、もう一つ、興味深いエピソードを持った人がいます。
ここで、ご紹介したいと思います。

自分が面白いと思ったことを、人にも面白く伝えられるーまさにその能力を極めたような、映画監督のクエンティン・タランティーノさんです。
カンヌ国際映画祭・最高賞となるパルムドールや、アカデミー賞の監督賞を受賞しながらも、自身で脚本を書き、俳優として出演もこなします。
実に精力的な仕事ぶりですねよね。

彼の代表作の一つが『キル・ビル』。
この作品のvol.1に挿入されているアニメ部分は、日本のアニメ制作会社であるプロダクションI.Gが担当しています。
プロダクションI.Gは、『攻穀機動隊S.A.C.』シリーズ、『戦国BASARA』シリーズなど質の高いアニメ作品で知られ、世界的にも高い評価を得ています。
この会社に勤める私の友人が、タランティーノ監督のエピソードを話してくれました。

実は、『キル・ビル』のオファーが最初にあったとき、プロダクションI.Gとしてはお断りしたのだそうです。
押井守監督の新作映画『イノセンス』と、神山健治監督のテレビシリーズ『攻穀機動隊S.A.C』という2作品の制作で、現場はていっぱい。
とても人をまわせる状況ではない、というのがその理由でした。
そのとき、タランティーノ監督は、「わかった。では仕方がない・・・・」と言って、あっさり引き下がったそうです。

「何としてでも!」という情熱が人の心を動かす

しかしその直後、アメリカから、大量のFAXが。
これは、タランティーノ監督の嫌がらせ・・・・ではなく、「何としてもいい映画を作り上げたい!」という、彼の情熱によるものでした。
「この映画にはプロダクションI.Gのアニメが絶対に必要なんだ。とにかく脚本を読んでくれ!」と迫ってきたのです。

FAXで送られた脚本を読んでいた代表取締役社長の石川光久さんは、はたと膝を打ったそうです。
「プロダクションI.Gでは、リアルに細部を描写することや、ディティールにこだわることが第一だと思って、リアル志向でアクションを描く作品作りを、これまでずっとやってきた。けれども、タランティーノの脚本は、大胆で、アニメでしか実現しないものを求めている。
『娯楽映画を作る』ということを、もう一度原点に返ってやってみるのも面白いんじゃないか」
タランティーノ監督の情熱が、プロダクションI.Gの心を動かしたのです。

自分が面白いと思ったらそれを人にどんどん伝えよう

結果的に、『キル・ビル』の興行収入は、vol.1とvol.2を合わせると、全世界で3億ドルを超え、非常に大きな成功を収めた作品となりました。
これはまさしく、タランティーノ監督の「自分が面白いと思ったことを、人にも面白く伝えたい」という情熱の賜物なのではないでしょうか。
そして、その情熱に、プロダクションI.Gも、誠実な仕事ぶりで応えた。
そのことが、関わったつべての人に利益をもたらす、大きな成果を生んだのです。
もちろん、プロダクションI.Gにオファーをしたときの、タランティーノ監督の空気を読まない行動が笑いを誘い、プロダクションI.Gのスタッフを和ませたという絶妙な効果もあったとは思いますが。

タランティーノ監督のようなすごい人の真似はできないと、皆さんは思われるかもしれません。
でも、少しずつでもいいから、「自分が心から面白いと思うことを見つけ、それを人にも面白く伝えること」を心がけてみてください。
これに対して、スルーしたりバカにしたりする人も当然いるでしょう。
でも、別に損をするほどのことではないと思います。
ちょっと変な奴と言われて、軽く笑われるくらいで済むのではないでしょうか?

その一方で、あなたのことを「面白い」と思って、あなたのペースに巻き込まれてくれる人が出てくるはずです。
面白いと思ってもらえたら、その人はあなたの味方。
一緒になって面白いことを思う存分やってくれるでしょう。
一つでも面白いことが成し遂げられたら、あなたにも、あなたの味方にも、大きなプラスの結果が必ず待っていますよ。

世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた

中野信子 アスコム 2021

 


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