例えば地震や火災の被害をニュースで見ても
「自分にはそういうことは起こらないだろう」と思う
著名人ががんを公表したニュースを見ても
「自分や自分の身内にはそんな不幸は起こらないだろう」と思う
高齢者の自動車事故のニュースを見ても
「自分は大丈夫」と思う
しかし
不幸にもそのような現実に直面することになってしまった人からは
「まさか自分がそうなるとは思わなかった」
「まさか自分の家族にそんなことが起こるとは思わなかった」
というコメントがよく聞かれます
これは誰にでも起こり得る心理的防衛反応であり
人間心理に関する用語では「楽観バイアス」というそうです
物事を自身にとって都合よく解釈してしまい
自分にとって都合の悪い情報を無視したり 過小評価したりしてしまう特性です
日々の生活の中では 様々な変化が生じます
そのような常に変化する周囲の些細な出来事にいちいち反応していたら
心理的ストレスが増大してしまうため
ストレスを軽減しようとする無意識の作用で
予期せぬ事態や危険に対してある程度鈍感に対応する特性なのだそうです
今から10年位前でしょうか
私が薬局薬剤師をしていたころのお話です
初発の大腸がんから肺そして全身へと広がってしまい もう治療の手立てがないと
在宅療養を選択された女性の患者さんが
初回来局から2~3回だけでしたが 疼痛管理のための処方せんを
ご自身の足で持参されていました
娘さんと2~3才位のお孫さん(女の子)と3人で
仲良く楽しそうに来局されることが多かったその患者さん
薬局を利用されるようになった頃には 彼女も娘さんともすでに
「人生を達観している」 そんな状態に達していらっしゃいました
それまでに多くの悲しみや苦しみを乗り越えられてきたのだと思いました
そんな彼女から 私は「一生のお願い」をされました
私は薬剤師として 一人の人間として 今もその約束を守っています
私は大腸がんが発見されるまで「自分だけはがんにならない」と 今考えれば何でそのように信じていたのかわかりませんが 根拠のないままにそう強く信じて生きていました このような現実が降りかかってくるとは夢にも思いもせず・・・ 「自分だけはがんにならない」そんなことを少しの疑いもなく信じていたので がん検診など全く受けずに・・・今この有り様です そのことをとても後悔しています とても悔しく思っています だから私の大切な人達に 同じような思いをして欲しくない そう強く想っています 私が連絡を取れる範囲にいる人には このことを伝え続けてきました でも私が伝えられる範囲はそう広くありません だからあなたに一生のお願いです あなたはこうやって薬剤師をしていて 1日に何十人という患者さんと お話をする機会がありますね? ぜひその患者さんたちに 私の代わりに伝えて欲しいのです 「自分だけは大丈夫」と思っている人達に 大丈夫じゃないことがある 大丈夫じゃなかった時には たくさんの苦しみ悲しみに 立ち向かわなくてはならなくなり それは人生でとても難儀な事です だからがん検診を受けてください 何の異常もなく大丈夫だったのなら 笑い飛ばしてくれて結構です 一人でも多くの人に このことを伝えて欲しい
それから私は毎年の人間ドックはもちろん
大腸内視鏡検査を2年に1回 継続して受けています
そして ぜひと思う患者さんには 検診の受診についてお話をしています
「大腸内視鏡検査は下剤が大変だからちょっとね・・・」
「マンモグラフィのあの痛さったらないよね・・・」
そう話す患者さんは多くいらっしゃいます
確かに大変じゃないと言えばウソになるかもしれませんが
彼女の言葉を借りれば
「命を取られるくらいなら たった半日の我慢なんて何てことない」
「検査のために大量の下剤を服用しなくてはならない」と思うと
確かに大変ですし お世辞にも美味しいものでもありませんが
「腸の中がきれいになるから お肌の調子も良くなって腸活にももってこいだ!」
そんな風に「リフレーミング」してみてはどうでしょう?
ちょっとだけ前向きになれませんか?
一人の人間として 誠実に彼女のお願いを受け入れて実行する
「患者さんに寄り添う」というのはよく聞かれる言葉です
口で言うのは簡単だけれど
実際に行動に移すことで初めて成し遂げられることなのだなと
つくづく感じています
あなたの「患者さんに寄り添う」行動はどんなことですか?
ターリ・シャーロット: 楽観主義バイアス
https://youtu.be/B8rmi95pYL0
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