教える内容を「知識」と「技術」に分ける
さて、「教える」とは何か?その目的が明確になりました
次に考えなければいけないのは教える「内容」です
あなたは部下に業務を教えるとき、事前にその内容をきちんと整理しているでしょうか?
何の準備もなく、その場で頭に浮かんだことをランダムに教えるという方法では、肝心なことが抜けてしまう危険性が高いですし、教えられる部下からすると、仕事の全体像をなかなか把握できません
また、「それはもう、この間おしえてもらいましたよ・・・」なんてことも、よくある話です
そのため、的確に効率よく「教える」ためには、事前の整理が必要になります
仕事を教えるときに必ずやっていただきたいのが、教える内容を「知識」と「技術」に分類することです
「知識」とは、聞かれたら答えられること
「技術」とは、やろうとすればできること
これを具体的にイメージするには、自動車教習所を思い浮かべていただくといいでしょう
そこではカリキュラムを「学科教習」と「技能教習」にはっきりと分けていて、それによって教える側も教えられる側も、"今は知識を学ぶ時間だ""今日は技術を習得しよう"というように意識し、効率よく学ぶことができます
アパレルショップであれば、たとえば「今シーズンのファッション・トレンド」「素材ごとに異なる洗濯の注意点」「商品の追加発注をするための電話番号」といったことが"教えるべき「知識」"
スタッフ全員が「聞かれたら答えられる」という状態になるよう指導しなければなりません
一方「商品の入荷・検品・品出し業務」「服のたたみ方」「お辞儀の仕方」「プレゼント用の包装」などの「技術」は、実際に「やろうとすればできる」ようにトレーニングを積んでもらう必要があります
教える内容を「知識」と「技術」に分けることで、指導の内容や手順がスッキリとしますし、もし指導がうまくいかないことがあっても「技術が未熟?それとも知識が不足している?」とチェックすることで原因が見つけやすくなります
"できる社員"の「行動」を徹底分析する
「教える」という機会は、職場でも家庭でも、さらには街の中にだってあります
しかしその対象をビジネスだけに限れば、
ー 部下が「望ましい行動(=成果につながる行動」を行えるように導く
これこそが、「教える」ことだと言えるでしょう
では「成果につながる行動」とは何でしょうか?
答えの見つけ方は簡単で、優秀な社員の仕事ぶりを観察すればいいだけ
なぜなら、成果を出している人は成果の出る行動をしているからです
販売の仕事であれば、出社して始業開始までにしていること、店にお客様がいない時間は何をして過ごしているか、お客様に最初の一声をかけるときの立つ位置や姿勢は?セリフは?声の調子は?表情は?
迷っているお客様にはどう対応しているか、試着室から出てきたお客様にどんな声かけをしているか、レジまで案内するときにしゃべっていること、会計を終えてお客様をお見送りするまでの手順・・・
とにかく一つひとつの「行動」を細かくピックアップしていきます
仕事にはさまざまなやり方がありますから、複数の"優秀な社員"の仕事ぶりを観察・分析するのが理想的
そうすることで、成果を出すために絶対欠かせない「行動」が浮き彫りになってきます
もし、あなた自身がその業務に卓越しているのなら、あなたがプレイヤー時代にしていた「行動」も合わせて分析しましょう
いつもしていた「行動」をあらためて細かく思い出してみることは大変有効です
こうして「成果につながる望ましい行動」を見つけ出し、それを一覧に書き出せば、その業務で成果を出すための「チェックリスト」の完成です
リストに書かれている行動は"成果を出している人の行動"ですから、それを再現すれば、どんな人でも成果を上げられる可能性が大いに高まります
"優秀な社員"の行動を観察し、チェックリストを完成させるには少々時間がかかりますが、一度つくっておけば、他の部下を指導する際にもそのまま活用できます
部下の「できること」「知っていること」をチェックする
次にやるべきことは、部下がその業務について「どこまで知っているか?」「どこまでできているのか?」を確認することです
「こんなことは当然知っているはずだ」という思い込みは厳禁
新人はもちろん、中途社員や他部署から異動してきた社員についても、入念なチェックが必要になります
「知識」のチェックは、一問一答形式のテストが最適です
質問項目は業務で必要な専門用語、成果を出すための重要ポイントなど
できる社員の行動をもとにつくった「チェックリスト」に沿って割り出していきましょう
「新素材〇〇の3つの特徴は?」「商品の追加発注はどこに連絡すればいい?」といったことを、口頭あるいは記述で回答させます
一方の「技術」は実際にやってもらえばいいでしょう
「商品の検品をどうやっているか、見せてくれる?」「この商品をプレゼント用に包んでみてください」という具合に
こうして、その部下が「知っていること」「できること」が把握できたら、チェックリストと比較を
<成果を上げている人の行動(身につけている知識・技術)>と<部下の行動(身につけている知識・技術)>の間にあるギャップが<部下に教えるべき行動(部下に不足している知識・技術)>ということになります
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教える技術 マンガでよくわかる 行動科学を使ってできる人が育つ!
石田淳 かんき出版 2015