好きな分野しか勉強しない人は、選ばれない。周辺の勉強もする人が、選ばれる。
たとえば、葬儀屋さんという仕事があります。
ふだん、葬儀屋さんに頼む機会はなかなかありません。
自分の親が亡くなった時くらいなので、一生のうちに1回か2回しかつき合いが生まれません。
前からつき合っている葬儀屋さんがいないというのが葬儀屋さんの世界です。
そんな中でも、選ばれる葬儀屋さんと選ばれない葬儀屋さん、流行っている葬儀屋さんと流行っていない葬儀屋さんとに分かれます。
選ばれる葬儀屋さんは、葬儀にかかわるあらゆる質問に答えます。
「葬儀に関してはすべての質問に無料でご相談に応じています」
と言う葬儀屋さんも、正解です。
それより上の正解で選ばれる葬儀屋さんは「相続税とか銀行とか、口座はどうしたらいいんでしょうかね」という相談にものります。
相続は、葬儀とは関係ない話です。
税理士さんのレベルの話ですが、「皆さん、こうされていますけれども、こういうふうにされたらいいんじゃないですか」と答えます。
その相談にのったからといって相談料を取ったり、葬儀の料金を上乗せしたりすることはいっさいありません。
自分の本業にはまったく関係がないことの相談にのれる人が、選ばれる人になっていけるのです。
誰しも好きな分野、得意な分野は勉強しています。
ここでは差がつきません。
選ばれる人は、好きな分野の周辺の分野のことまで勉強しているのです。
周辺の勉強は、直接的な収益にはつながりません。
親が亡くなると、「親の貯金はどうしたらいいのか」「部屋のあと片づけをどうしたらいいのか」という、ありとあらゆる初めてのわからないことに直面します。
そこで、すぐに相談できる人は葬儀社の人しかいません。
この時に、お客様の相談に新設・丁寧に答えられるかどうかです。
答えるためには、知識が必要です。
「それは税理士さんの仕事ですね」と切り捨てた時点で、その人は選ばれない存在になります。
身内が亡くなり、落ち込んでパニックになっている時に、「わからないことがあったらなんでも聞いてください」という窓口になれることが一番大切です。
たとえば、レストランの研修をする時、私は「とにかく皆さんは自分の店については詳しい。ところが、よそのレストランのことは何も知らない」と指摘します。
まじめで一生懸命であるほど、休みをとらずに自分の店でずっと働いているからです。
自分の店の料理に関してはなんでも知っています。
ただし、お客様は「最近、オススメのレストランとかある?」という質問をします。
相手がレストランのプロだと思うからです。
お客様はおいしいところを教えてほしくて、プロに聞くのです。
その時に「うちがやっぱり一番おいしいですね」と言うお店には、次からは来ません。
「今週、〇〇に行ったらすごくよかったですよ」という話を聞くと、「やっぱりこの人は信用できる」という形で、またそのお店に行くようになります。
これが、インターネットの世界におけるポータルになるということです。
「とにかくそこに行けば何か解決する」「何か困ったことがあったらそこへ行けばいい」という状態にするためには、自分の専門分野だけの勉強では不十分です。
まったく畑違いのことではなく、専門分野の周辺のことを勉強しておくことで、選ばれる存在になっていくのです。
「こんなこと聞いても大丈夫かどうかわからないんですけど」と遠慮がちに聞く人もいれば、「これは葬儀に関することだから、相続のことも葬儀屋さんは知っているでしょう」と聞く人もいます。
困っている人は誰がどの専門なのかがわかりません。
ポータルになって選ばれるためには、周辺の勉強をする必要があるのです。
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