信頼される薬剤師になるために②

薬剤師

私は 新卒で保険薬局の薬剤師になりました
最初に就職したその会社には20年ぴったり勤めました

その会社での19年目の年 
私は母校の薬学部で「実習補助員」として薬学生の実習の指導に携わりました

母校から送られてくる卒業生(校友)向けの会報に
その募集の記事を見つけ応募したのです

薬学部の5年生が薬学実務実習へ赴く前の「事前実務実習」の指導のお手伝いです
このことが 薬学部の教員となるきっかけになりました

薬学部内で実施される事前実務実習にはいくつかの領域があり
散剤や水剤などの「薬剤の調製」
注射薬などの「無菌操作」などもありましたが
私が指導に携わったのは「コミュニケーション」の領域でした

そのコミュニケーション領域にも「初回応対」と「情報提供」があり
私は「初回応対」を担当することになりました

私は4年制卒の薬剤師ですので 
大学で「コミュニケーション」については全く学びませんでした
同世代の4年制卒の皆さんのほとんどがそうだったと思います

新卒で4月に入社し 初めて服薬指導を開始したのはGW明けからで
初めてカウンターで患者さんの名前を呼んだときは
手も足も震えていたのを覚えています

服薬指導開始の時期を今でも鮮明に覚えているほど
衝撃的な出来事だったということでしょう

そんな私から見たら 
6年制におけるコミュニケーション教育は衝撃的でした

新卒1年目のGW明けから 体当たりで挑み続け 
悩み苦しみ 怒鳴られたり泣いたこともありました
19年間の経験から身につけた様々なコミュニケーションスキルが
当たり前のように サラッ~と教科書に書かれていました

私が悩み苦しみ 泣きながら身につけたそれらのスキルには
それぞれカッコいい名前がついていました

大変な驚きでした 「私の19年間を返して~」
正直そんな気持ちもありました

しかし 19年の経験で体当たりで身につけたそれは
絶対的に揺ら
ぐことのない確固たる能力として身についたこと
知識を先に得てからであっても 確固たる能力として身につけるためには
結局同じくらいの経験が必要であろうこと

それは後からわかりました

その「実習補助員」を始めてから 1つ現場に持ち帰り実践したことがあります
6年制教育では当たり前に実施されていることでした

19年の体当たりコミュニケーションで 教科書に書いてあるほとんどのことは
自然に身についていましたが 
現場に持ち帰ったそれは 19年間の経験では気づくことができていなかったことです

私は 現場に持ち帰ったその時から今でもずっと続けていますが
同じことをしている薬剤師に会ったことがありません

きっと日本のどこかには 実践している薬剤師は多くいるはずだと思いますが
少なくとも 私が大学教員をしながらパートで勤めた薬局では
出会ったことがありません

6年制卒の薬剤師なら必ず、絶対 大学でそれを学んだはずなのですが
4年制卒の薬剤師がそのことを知らず現場で実施されていないため
大切なそれが実践されない文化になってしまったのかもしれません

とても簡単なことで 誰でも明日から始められます
そして「信頼される薬剤師になりたい」と考えている薬剤師にとっては
絶大な効果が期待できることです

それは「自己紹介」です

「な~んだ」と思われましたか?
6年制教育を受けた薬剤師さんは OSCEでやりましたよね?
今でも現場で実践していますか?

この効果は絶大です
だまされたと思って 是非実践してみてください

実践し慣れていない方には 
始めちょっと「恥ずかしい」感じがあるかもしれませんが
ゼッタイやる価値「アリ」です

私たちは処方箋を受け取っていますから
患者さんのお名前、お誕生日、加入している健康保険
そして 処方から 何となくの疾患を予想できています

つまり患者さんの情報を ある程度得られています
しかし患者さんはどうでしょうか?

以前から薬局を利用されている患者さんは別ですが
自分の名前を呼ぶ白衣を着たその人は
薬剤師であろうことは理解できていても
その他 こちらのことは何も知りません

名前も立場もわからない人に 初めて会ったその人に
何か相談などできるでしょうか?

「実は・・・」と
医師に話すことのできなかったことを
打ち明けることができるでしょうか?

信頼される薬剤師になるために
私たちも「自分を知ってもらう努力」をする必要があります

「○○さん お待たせしました 薬剤師の“あべまりあ”と申します」
このように簡単な自己紹介をするだけなのですが
ちょっとビックリしたような顔をされる患者さんもいらっしゃいます

そして必ずと言っていいほど多くの患者さんが
「よろしくお願いします」と返してくださいます

この瞬間 患者さんとの間の「壁」のようなものが
取り払われるような感じがあるのです

私がこの「自己紹介」をずっと続けている理由は
自分がこれをされた時に 大きな衝撃を感じたことも理由の一つです

お若い先生でした 30代位の印象でした
何科で受診した時かまでは詳細な記憶がないのですが
初めてかかった医師でした

「お願いします」と医師の前の椅子に座った時に
「担当します 医師の●●です」と自己紹介をされたのです

「エッ!」と思いました 
顔に驚きが出てしまっていたかもしれません
自己紹介をする医師にお会いしたのはその時が初めてでした

それ位驚きました
と同時に 患者として心を開く準備ができた感覚がありました
何でも話して大丈夫な気がしたのです

ぜひあなたも明日から始めてみませんか?

簡単です 誰でもできます
ちょっと勇気を出して

信頼される薬剤師になるために 背中を押してくれるはずです

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